未来の可能性を探るための小規模農園の在り方を研究

現在の気候変動に関する議論は、主に化石燃料をクリーンエネルギーに置き換えることに焦点が当てられています。これは確かに重要な課題ですが、私たちが直面している問題の一部にすぎません。他にも、生物多様性の喪失、資源の枯渇、廃棄物管理、そして有限な世界における経済成長のあり方といった、緊急性の高いテーマが存在します。

社会の変動はすでに始まっているとはいえ、私たちがどのような未来へ向かおうとしているのか、そのビジョンはまだ明確ではありません。フランスには「大切なのは落下ではなく着地」とことわざがありますが、まさにそのとおり、私たちは変動の先にある世界に取り組まねばなりません。持続可能な社会への転換がうまくいったとしたら、その先にどのような世界が広がっているのでしょうか。

問題の複雑さを考えると、私たちの問題を解決するための万能薬はありません。私の目標は、技術をどのように使用し統合するかについて、より深いビジョンを発展させ、意味のある仕事と長期的な環境および経済の持続可能性を確保することです。第一に重要なのは 、人類、自然、技術の新しい結びつきを見つける必要があるということです。

私はこのテーマを探求するにあたり、サステナブルな農業、とりわけ19世紀のパリで行われていた市場農家の農法をベースにした集約型マイクロファームに着目しています。なぜなら、小規模で都市型の農業は、社会的、歴史的、経済的、技術的、人間的、自然的、そしてエネルギー的側面をすべて内包した「世界の縮図」といえるからです。こうしたニッチな領域を扱うことで、先に挙げた課題の一部に取り組むことができます。たとえば、[ROMI]プロジェクトでは農業向けのロボット技術や作物モニタリングを研究し、[DREAM]では植物の健康状態を把握するための新たな計測手法を探求しています。[MIHY]プロジェクトでは、廃水から窒素やリンを回収して水耕栽培システムに供給し、同時に少量のエネルギーを生み出すことに取り組んでいます。

最近では、このフランス式手法に関する研究の中で、農家や農学者、歴史家との協力体制を整え、小規模農業の長期的なビジョンを策定する取り組みを進めています。研究はときに、短期的な成果や実行しやすいテーマにとらわれがちです。今年中に大きな学術出版を出せるか? 3年以内にこのアイデアが産業応用に成功するか? そうした短期的な成果の積み重ねによって、長期的な影響についての考慮を見失う可能性もあります。農業はその典型例です。1950年代の「緑の革命」は、農業の大幅な刷新と目覚ましい成果をもたらしましたが、その裏で環境的・社会的な悪影響が軽視されていました。私たちは小規模農業に焦点を当てることで、一歩下がって先端的なロボティクスやAIをどう活用すべきかを再考し、食料生産の自動化にまつわる危うい道へ踏み込みすぎないように考えることができるのです。

より広い視点で見ても、今後はエネルギーの生成、素材の生産と変換、情報の収集・処理・伝達など、あらゆる面で生物学的、または生物学にヒントを得たシステムにより大きく依存していくことになるでしょう。そして、その変化を支えるための新たな想像力が必要とされているのです。

Keywords

Sustainability
Agriculture
Robotics
Human-AI collaboration

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