SIGGRAPH2023

[The 50th International Conference &
Exhibition on Computer Graphics & Interactive Techniques]

2023年8月6日 ~ 10日 SIGGRAPH2023[The 50th International Conference & Exhibition on Computer Graphics & Interactive Techniques ]がロサンゼルスで開催されました。会場内、EXHIBITIONホールでは数十社が企業ブースを構え、各社が商品デモや研究開発内容の展示を展開しました。ソニーコンピュータサイエンス研究所(ソニーCSL)も、ソニーグループの企業スペース内にて展示を行いましたのでその模様をレポートします。

SIGGRAPH2023はCGとインタラクティブ技術における国際学会で、ソニーグループがスポンサーとして参画しています。

ソニーCSLからは京都リサーチでの研究テーマの紹介として、「Cutting-edge technology meets culture in Kyoto」と題し、以下「西陣織の制作支援」ならびに「拡張茶室:寂隠」の2テーマを紹介しました。

「西陣織の制作支援」
メンバー: 暦本 純一シナパヤ ラナ、足立 旭* / 動画制作:服部 円**
* 学生研究員 / **リサーチアシスタント

本テーマでは、人工知能を用いて、和柄模様を認識及び生成する技術を開発しています。日本では古来より和柄模様が着物や浴衣といった衣服や建築物の内装などに用いられてきました。そうした伝統的かつ歴史的な模様である和柄模様に注目し、文化とテクノロジーの融合のあり方を議論する機会としています。

西陣織の伝統に最先端のテクノロジーを取り入れ、新たなデザイン・製造手法や工程の改善に挑戦していくにあたり、西陣織メーカーであるフクオカ機業さまの協力をいただいております。今回は本技術により生成した新たな和柄デザインを用いた西陣織を製作・展示しました。文字入力から画像を生成する人工知能(既存の有職文様を用いた追加学習済)を用いて作成したデザイン案をもとに制作した西陣織ですが、今後はその他多くの製造工程:紋紙作成、糸染め、製織などにおいても伝統技術と最先端のテクノロジーとの融合のあり方を模索していきます。

<動画:https://youtu.be/1QVQUi5pKzE?si=NevO35NzUlVXCJE8

「拡張茶室:寂隠」
メンバー:暦本 純一、濵西 夏生**、網谷 海志** / 動画制作:三浦 康平**
**リサーチアシスタント
本テーマでは、茶室内の空間を時空間的に記録し、人の動作や道具の配置を自由視点から再観察できるようにした「拡張茶室:寂隠」の紹介をしています。茶道の稽古は身体性を伴う学びであり、師(教授者)から弟子(生徒)への教授を通して伝統的に受け継がれてきた作法を体得するものです。本システムを使用することにより、生徒は、教授者の立ち居振る舞いはもちろん、自身の動きを“ゴースト”として第三者視点から観察できます。例えば、生徒は教授者の立ち位置に移動してその所作を観察することで、身体の位置と茶器との相対的な位置関係を視認し、教授者の配置と自身の配置を比較できます。他にも生徒は過去と現在の自身の所作の違いといった作法の体得度合いを、任意の時間に満足するまで見比べて確認し体感できます。

このように伝統的な稽古による教授だけでは受け取り得ない情報をもとに、これまで受け継がれてきた作法の体得に勤しむことができます。こうした時間と空間を超えた拡張作法伝承環境を進展させることで、文化の伝承の一助となることを目指します。

協力:東京大学社会連携講座、凸版印刷株式会社

<動画:https://youtu.be/_8WEruJlflg?si=yYDS3JqHcQM6Qo0b

多くの方にブースを訪問していただき、「テクノロジーで現地のローカル文化を活性化することは、まさに今の時代に必要とされているアプローチで、社会的な意義も非常に大きい」「単にPC画面上で和柄を生成するに留まらず、生成された柄を実際に織物にすることによって、その価値をより体感することができ、発想も広がる。」「茶室の件も西陣織の件、伝統的な文化とテクノロジーが見事に融合されていることに驚いた。伝統を尊重しつつも未来への挑戦をしている姿勢に感銘を受けた。」などといった反応がありました。

SIGGRAPHの学会への現地参加者(参加受付総数)は14,275人、3日間でのソニーの企業ブースを訪問した参加者は延べ4,000人超が訪問してくださいました。本展示は様々な視点を持つ学生・企業・官僚の方などと意見交換を行い、多くの方がデモや説明を興味深く聞くなど、盛況のうちに終えました。これからもソニーCSL 京都リサーチ では、テクノロジーの進化と文化・伝統・人間性との関係性を探求し、未来の社会への貢献を模索していくことを目指します。

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