ダイレクト系保険会社でNo.1の売上を誇るソニー損害保険株式会社(ソニー損保)では、顧客データ解析をマーケティング施策に繋げる取り組みを行っています。
その中の一つとして、ソニーCSLの 磯崎研究員 が分析メソッド・アルゴリズムを開発した因果分析ツール「CALC(カルク)」が活用されています。
CALCは、膨大なデータから改善したい項目に直接的に影響を与える因子を、因果モデルとして導き出すことができます。改善項目に対し、何が因果的に関係しているのかが分かりやすく図示されるため、課題解決に向けた「施策のポイント」が明確になります。
従来の解析手法では推定が難しいデータ内関係因子における直接的な要因・原因を抽出することが可能な技術で、これまでに、製造業、金融業、サービス業をはじめソニーグループ各社にて活用されてきました。
今回は、ソニー損保でマーケティング部門・副部門長 兼 データベースプランニング部・部長を勤める石井英介さんが既存顧客向けマーケティングでのCALC活用事例をご紹介します。
「友人紹介キャンペーン」促進DMプロモーション
CALC活用によりDM発送後の紹介率が飛躍的に向上
一つ目は、「友人紹介キャンペーン」での活用事例です。既存顧客に対して、友人や家族を招待するようダイレクトメール(DM)を発送して紹介を募るプロモーションですが、DM発送後の紹介率をいかに向上させるかが課題となっていました。
そこで、CALCを活用して直接的な要因・原因や、課題解決に向けた「施策のポイント」を調べました。石井さんはこう話します。
石井 英介さん (ソニー損額保険(株)マーケティング部門副部門長 兼 データベースプランニング部部長) |
「お客様の属性データをCALCにかけ、最終的にどういう属性が一番紹介率に影響しているかを探しました。その結果、様々な属性の中でも、性別が直接的に影響しているということがわかりました。」
そこで、男女別でデザインを分けたDMキットを送ることでレスポンス率が向上するのではないか、と仮説を立てました。
「従来は一律のデザインを使用していましたが、特別に女性のお客様への訴求を意識したDMデザインを作成し、男女で送り分けました。」
この施策の効果を確認するため、従来デザインのAグループと、女性向けデザインのBグループに分けてDMを送り分けるABテストを実施した結果、女性向けDMを送り分けたことでBグループはAグループに対して紹介率が1.9倍と飛躍的に増加しました。
セカンドカーの契約獲得DMプロモーション
過去のデータをCALC分析にかけることで明確なCRM施策を可能に
二つ目の事例は、既に自動車保険に契約されているお客様に向けて、車の二台目契約を促すDMプロモーションキャンペーンです。DM発送後の自動車保険の申込率をいかに向上させるかが課題となっていました。
過去のレスポンス実績データをCALC分析にかけると、年齢が直接的に影響していることがわかりました。
「年齢が上な方ほどレスポンスがいいことが見えてきました。そこで、従来は安さに訴求していたところを一定年齢以上の方にはファミリー層を意識したDMを送りました。」
『"安さ"のみを訴求』した従来デザインのAグループ、N歳以上に特化した『"安さ"+ファミリー層向けデザイン』デザインのBグループに分けてDMを送るABテストを行った結果、契約獲得数が1.5倍に増加しました。
石井さんは、「いずれの事例も、CALC分析から影響している要因を特定したことで、実際のCRM的なコミュニケーション施策のヒントに活用して効果が出た」と話します。
CALCを活用し、関心のある項目どうしがどのような因果関係にあるのかを理解して、課題解決に向けた施策・改善のポイントを明確にできたことで具体的なマーケティング施策に繋がったと言えるでしょう。
※本記事は2022年3月に開催されたOpen House 2022で発表された内容です。
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