3/17 (木)
DAY2 : Human Augmentation & Creativity
究極のテクノロジーは人間と相対したり、人間を置き換えるものではなく、人間と一体化し、人間を拡張していくものだと考えています。「拡張」の範囲は、知的なものにとどまらず、感覚、認知能力、身体能力、存在感、身体システム(健康)に敷衍して考えることができます。本発表では、近年の研究内容の発表を通して、人と人、人と技術がネットワーク上で融合し、その能力が相補的に拡張されていく未来社会ビジョン:IoA (Internet of Abilities)について、また、人間の能力を高めるためのゆたかな可能性についてお話しします。
京都研究室(ソニーCSL京都)は、人や社会にとっての「ゆたかさ」の意味を問い直し、万人に恩恵をもたらす新たな技術開発の道筋を模索する研究室です。2020年から京都での活動を開始した3名の研究員(暦本純一、竹内雄一郎、ラナシナパヤ)が、2つのテーマ「伝統の継承・拡張」「未来都市と公共」について、発表を行います。
前半では、暦本室長が裏千家淡交会 理事の伊住禮次朗氏をゲストに迎え、テクノロジーの活用を通した「茶の湯文化の継承・拡張」について、点前などの作法や技能の伝承に貢献するテクノロジーの開発や、茶道の体験を拡張するような研究の可能性について議論します。
後半では、「みんな」でつくる未来の都市wikitopiaの実現に向けて研究を続ける竹内研究員を中心に、京都で開始する街づくりに関するワークショップについて紹介し、テクノロジーが都市の未来にどのように貢献できるか、その可能性について議論します。
本セッションでは、研究所における社会実装活動として、「JackIn」プロジェクトと、オープンイノベーションの取り組みを紹介します。
JackInは、人間を、ドローンなどの人工物や他の人間と接続し、能力や存在を拡張させようという概念で、ソニーCSLで2011年から行われてきた研究テーマです。この10年、多くの研究成果や実証実験を行ってきましたが、昨今のCOVID-19がもたらしたリモート需要の高まり、5Gの普及による高速通信の実現により、実用化のタイミングが近づいたことから、社会実装を目指す新たな体制でプロジェクトを再始動しました。今回の発表では、再始動の新たなコンセプトを紹介するとともに、新たに設計したプロトタイプを用いて、現場の1人称360度映像を遠隔地にいる複数人の参加者にリアルタイムで繋ぐJackIn体験のデモを行います。
続けて、オープンイノベーションを通じた社会実装の取り組みを紹介します。新しい技術を社会の何処へどのように実装するか、そのアイディアは容易に得ることできません。ここではさまざまなパートナーと共に解決すべき課題を探求し、パートナーと一緒にその解決に取り組んでおります。本プレゼンテーションではパートナーとこれまでに取り組んだ事例や現在の取り組みについて紹介します。ソニーCSLという研究所における社会実装活動という新たな側面を知っていただくことで、皆様との将来の新たな取り組みを期待しております。
生命科学・音楽・AIの各分野とつながりについて、ナターリアと赤間が研究紹介・対談します。生命科学の観点では、ナターリアが遺伝子とアンチエイジングについての研究を紹介します。生命科学・AI・音楽の観点では、ナターリアと赤間がAGCTという生物データの解析ツールの話と、音楽データにも対応できるようにAGCT-Deepへと派生させた話を紹介します。AIやデータ解析技術は多様な分野の解析に適用可能なところが面白く、異分野協業を促進させます。音楽・AIの観点では、赤間が、画像・自然言語・音声処理など他のAI技術ドメインと比較しながら音楽AIの現状分析を行います。そして赤間の研究として、楽曲の改変を次々に提案してくれるAIや、新しい楽器を作るAIのお話をします。
生命科学から見た音楽やAIとは何か?音楽・AIから見た生命科学の役割は?そもそもAIとは何なのか?こういった観点からも対談します。
Flow Machinesは、音楽においてクリエイターの創造性を拡張することを目指す、研究開発及び社会実装プロジェクトです。現在、Flow MachinesのiPadアプリケーションを一般公開しており、また、"A.I.Vocal" はじめとする多くの学習データStylePaletteを提供してます。このソニーCSLの技術をソニーミュージックのSoundmainへ適応する実験が開始されています。Flow Machines + Soundmainの将来、及び、AIを活用した音楽制作の将来についてパネルディスカッションを行います。
モデレーター:藤本健(DTMステーション)
パネラー:後閑研一(Sony Music Entertainment)、菊地智敦(RightTracks)、岸治彦
Music Excellence Projectは、音楽家の熟達支援と怪我の予防のための研究や開発であるダイナフォーミックスと、その成果に基づく音楽家のための身体教育プログラムPEAC(Physical Education for Artists Curriculum)の開発、そしてそれらを演奏や指導の現場に提供する社会実装のための各種プログラムから構成されています。
本発表では、前半は音楽ライターの高坂はる香氏をゲストに招き、「持続可能な文化の発展」を可能にするミライの音楽教育のあり方について対談を行い、後半にサイエンスとテクノロジーとデザインが相乗効果を生み出してアーティストのクリエイティビティをサポートする仕組みのあり方についての対談を本社クリエイティブセンターの方々と行います。
人間とコンピュータが融合した時、自分はどこまで自分か。私はコンピュータ技術を用いて人間の知覚や認知を拡張・変容させる研究「Superception(超知覚)」を通じて、人間とコンピュータが融合した時の「自分」がどのように形成されうるのかを研究しています。今回の発表では、現在、私が取り組んでいる「自分という輪郭の変化」、「人機一体における自己」、「ひとりがひとつの身体の限界を超える」の3つのテーマの実践例を紹介します。
その後、研究チームとコラボレーションしている研究者やアーティストをお招きして、研究開発における領域横断性や研究の体験化の意義、そして今後の構想や社会への展開などを議論していきます。
陸上競技 100メートル競走において、「10秒の壁」は1968年に破られました。その後、数々のアスリートにより記録は更新され、現在は9秒58という記録が世界記録となっています。一方、義足アスリートによる陸上100mの世界記録は10秒57となっており、未だ「10秒の壁」を破ることは実現していません。
本発表では、アスリート向け義足(ブレード)の研究開発を行っている遠藤が、為末大氏、松尾彰文氏、佐藤圭太氏、谷昭輝氏をゲストに招き、ブレードの技術力やアスリートの走り解析、医療機関の切断からリハビリプロセス、日々のトレーニングなど様々な観点から、義足アスリートが本気で「10秒の壁」を破るために必要なことを考え、今後の構想や社会への展開などを議論していきます。