音楽家の創造性と
持続可能性の実現
音楽家が生涯に渡ってクリエイティブな演奏を健やかに行える、文化的に豊かな社会の創造と持続可能性の実現に貢献することを目指しています。
音楽家は、文化の担い手です。なぜなら、数世紀に渡り、世界中で創り紡がれてきた人類の文化資産たる音楽を、現代の私たちに届けてくれる存在だからです。豊かな創造性と高度な知性に基づく多彩な表現を生み出すためには、洗練された心身の働きが不可欠ですが、その獲得には幼少期からの数万時間に及ぶ膨大な練習が必要です。音楽家はその過程で心身の問題に悩まされるリスクと常に隣り合わせにいます。
心に溢れる素晴らしい創造性を音楽として具現化するために研鑽を積む過程で、深刻な怪我に悩まされ、時にアーティスト生命が絶たれるといった問題は、今なお後を絶ちません。にもかかわらず、音楽家の心身を守り育むための身体の使い方や練習法について体系的に学ぶ機会は、世界中で未だに整備されていません。
また音楽家が演奏において、より創造性を発揮できるようになるための身体の使い方や心身のトレーニングに対する研究は、スポーツ科学などと比較してまだ十分に行われておらず、音楽家が練習に練習を重ねても創造性を十分に発揮できずに苦しむ「見かけの限界」の問題が改善に向かっているかは、未だ不明です。
音楽家が生涯に渡り創造性の限界を突破し続けられる社会の実現
音楽家が生涯に渡り創造性の限界を突破し続けられる社会の実現には、芸術教育と相乗効果を生み出せる身体教育が不可欠だと考えます。
芸術教育の目指すことは、楽譜という記号・文字の情報を「こう聴こえるような知覚体験を生み出したい」と変換する”音楽の文法”を身に着けることがであり、そのために知識や解釈、感性や美的感覚を養います。一方、身体教育の目指すことは、理想の知覚体験を生み出す音楽を創造するために必要となる身体の使い方や注意の向け方や練習の方法といった”身体の文法”を習得することです。
研究開発と教育のシームレスな循環の実現に向けた取り組み
音楽表現を生み出すために必要となる、最適な心身の使い方や練習方法を明らかにするための学問である「ダイナフォーミックス」の研究と技術開発を通して、音楽家の演奏の熟達支援と故障予防に取り組んでいます。研究成果として得られたサイエンスに基づく確かな理論を、テクノロジーの力で音楽家に還元すべく、身体教育カリキュラム「PEAC(Physical Education for Artist Curriculum)」を構築しております。さらに、このPEACと芸術教育を組み合わせた包括的な教育プログラム「Music Excellence Academy」を実践することによって、指導の現場で明らかになった課題や解決法を体系的に整理、暗黙知の継承を可能とし、研究開発と教育のシームレスな循環の実現に取り組んでいます。

基礎的な研究から実践で使うことのできる技術開発、そして教育プログラムの提供を通して、芸術と科学が相乗効果を生み出す仕組みを作り、実社会に展開することで、”持続可能な文化の発展”に貢献することを目指しています。
Projects
アートを紡ぐサイエンス
Keywords
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